2026/05/23 11:21

  

  紹介文

   第一部 佐渡丸樹の娘

江戸時代のこと、公家の娘春子は自宅へ帰るために夜道を駕籠で急いでいました。

ところが、盗賊に襲われて誘拐され、オランダへ売り飛ばされてしまいます。

更にはサド侯爵に買われて男児を出産します。

でも日本へ戻らせてもらえ、息子を佐渡丸樹と名付け、代々栄さすのです。

そして三代目の佐渡丸樹は湯河原に佐渡御殿を、青木ヶ原樹海に別荘“佐渡の館”を構える大富豪となり栄えます。

でも長女千鶴子はサドの血筋を嫌うのです。

それでも、やがて・・・・・。

 

   第二部 羞恥の微笑み

佐渡家長男の光は、横浜文化大学の学友である絵美さんと知り合い、仲良くなります。

と同時にアルバイトでしている仕事の同僚である美香さんとも深い仲になるのです。

しかし美香さんは記憶喪失になってしまいます。

そして変態男の妻となるのです。

それでも裕福な生活。

はたして幸せなのでしょうか・・・・・。

   第三部 女刑囚賛歌

佐代子は貧乏な家庭に育ち、小さい頃から食料品屋の店先から盗んで飢えをしのいでいました。

それでも、みんなは許してくれていたのです。

ところが大人になってからも盗みをはたらき、逮捕されてしまいます。

刑務所へ送られた佐代子は恥ずかしい思いもします。

それでも仕事をする普通の生活に目覚めてゆくのです。

そして出所してからの曙デザインでの見習いの仕事。

しかし思わぬ事件に巻き込まれ、再び刑務所へ・・・・・。

やがて出所して、もう一つの就職先である東画AVプロダクションで頭角を現してゆくのです。

それを佐渡丸樹に認められて佐渡光と結ばれます。

ところが佐渡丸樹は破産してしまい、統合失調症におかされてしまうのです。

しかし佐代子は佐渡丸樹に感謝していました。

やがて佐代子の大活躍が始まってゆくのですが・・・・・。

これまでの事件にかかわっていた探偵あきらも、人々の運命の好転を願っていたのですが・・・・・。

(この作品は、400字詰め原稿用紙138枚の作品です。)



   はじめに


 十人十色といいますが、様々な方がおられて当然でしょう。

恥ずかしさも人によって喜びに捉えられるところもあるのではないでしょうか。


  第一部

   佐渡丸樹の娘


  第二部

   羞恥の微笑み


  第三部

   女刑囚賛歌





   もみじの頃

                 藤本英明

                          

  第一部

    

     佐渡丸樹の娘

      

  江戸時代の京でのこと・・・・・。

公家の娘、春子は夜道を駕籠に揺られながら帰宅を急いでいました。

ここらあたりは、よく盗賊が出没するとの噂を聞いていたからです。

「まてっ!

身ぐるみ脱いで置いていけ!

命まで取ろうとは言わん!

駕籠から出てこい!」

春子は震えながら駕籠を降ります。

駕籠屋は一目散に逃げてゆくのです。

「ほう、なかなかに良い女ではないか。

さあ、着物をもらおうか!」

春子は震えながら、うずくまっています。

「いや、まてまて、お前を身体ごと頂戴しよう。

さあ、来るんだ!」

春子は男に抱えられて、いずこへか連れ去られてしまいます。

盗人の隠れ家で改めて着物を解かれる春子。

上等な着物は売り飛ばされるのでしょう、肌襦袢だけになった春子を見て、男はよだれを垂らします。

「大切な売り物でなければな。

可愛がってやるんだが。」

盗人は、よだれをぬぐいます。

「まったく売りもんじゃ無けりゃなあ・・・・・。

いけねえ、いけねえ。

その気になっちまうぜ。」

盗人はそう言いながら、その場を離れていきました。

翌日からは長旅です。

春子は手足を縛られ、猿轡をされて駕籠に乗せられます。

駕籠は早駕籠です。

そうして着いたところは長崎でした。

 やがて春子は船に乗せられます。

長い船旅です。

春子はオランダに売り飛ばされたのでした。

オランダに着くや否や、そこからさらに、フランスへと売り飛ばされたのです。

サド侯爵が日本の女性に興味を示していて、求めていたからでした。

そして、運がよかったのか悪かったのか、サドに買われた春子。

身体の隅から隅まで執拗に調べられます。

まず味見をされるのです。

その味の良さをしったサド。

春子は色々な姿態を求められ、可愛がられました。

ことのほか優しくしてくれるのです。

サドの様々な要求に従順に応じる春子。

それからも数々の辱しめを受けながら、やがて男児を出産。

その献身的な奉仕を認められ、日本に血縁を増やしたいとのことで、親子ともども日本に送り返されることに・・・・・。

それから、京に戻って明日香英麿公に見初められた春子は、息子を佐渡丸樹として独立させ、公家の仲間入りをさせて代々栄えさせたのです。

そして三代目の佐渡丸樹が富士山の裾野、青木ヶ原樹海に豪華な宮殿を思わす別荘を建てたのです。

財閥佐渡家は造船業によって財を成し、この別荘を佐渡の館と命名したのでした。

本宅は湯河原にあり、佐渡御殿と呼ばれています。

妻、房子との間に、男二人、女三人の子供たちがいました。

長女千鶴子は、十八歳。

夜な夜な性に溺れる毎日なのです。

やめようと思うものの、血が騒いでどうしようもないのです。

程々にしておけばいいのでしょうけれど、ついつい度を過ごしてしまうようです。

「お父さま。」

と、千鶴子が父を呼んだ。

「なんだい?」

「お父さまはどうしてそんなに落ち着いていられるのでしょうか?」

「おまえは程々に出来ないんだね。」

「そうなんです。

どうしたらいいのかしら、わたし。」

「そのうち程良さが身についてくるさ。」

「そうでしょうか。」

「ああ、心配はいらないよ。」

「そうならばいいんですけれど。」

「お前はサドの血を引いていることを苦にしているようだけれど、私は誇りに思っているんだよ。

性は決して悪いことではないだろう。

ただ、ほどほどにできなければならない。

度を過ごすから、おかしなことになるんだ。

むしろ上手に生かして素敵な生活をするべきなんだ。

何でもそうだろう、度を過ごしてはいけない、程よくできなければね。

そうは思わないかい。

私はそのために、お遊び倶楽部を経営しているんだよ。

程よく遊ぶことを学んでもらうためにね。」

「それは分かりますわ。でも、世間の目が気になります。

なんて思われているか知っておられます、お父さま。」

「いいじゃないか、思いたい奴には思わせとけばいい。私は気にしないよ。」

「お父様はそれでいいかもしれませんが、やはり、世間の目は冷たいです。」

「そんなことはないだろう。」

「あります。

わたし、どうしたらいいのかしら・・・・・。」

「いいんだ。お前は何も悪くはないよ。

お前はただ普通の女の子のように生活したいだけなのだろう。

大丈夫だ。心配するな。私がなんとかしてやるから。」

「お父さま・・・・・。」

「おいで。」

「はい・・・・・。」

佐渡丸樹は両手を差し出して、千鶴子を抱きしめます。

「愛しているよ、私の可愛い娘さん。」

「お父さま、あたしも大好き。

このまま時間が止まればいいのに。」

「私も同じことを考えていたところだよ。」

佐渡丸樹は娘の髪を撫でてやります。

更にくすぐってやるのです。

脇の下から足の裏まで、身体じゅうをくすぐってやります。

身もだえる千鶴子。

体を捩ろうとするのですが捩れないのです。

さんざ身もだえていたのですが、そのうち気持ちよくなったのでしょう、おとなしくなってきます。

身体を仰け反らして身もだえる千鶴子。

「ははははは!ちょっと苛めてみたくてね。どうだい、恥ずかしいのもいいもんだろう。」

「それは、お父様はいいでしょうけど・・・・・。」

「どうやら、お前には、あまり効かなかったようだね。」

「そりゃあそうよ、お父様の子ですもの。もう、なれちゃったわ。」

「さあ、お遊びはおしまいだ。

そろそろ、おやすみ・・・・・。」

「お休みなさい・・・・・。」

そして、そのまま眠ってしまいました。

千鶴子は朝まで起きませんでした。

湯河原の朝は気持ちいいのです。

温泉を引いてあるので朝湯に入ります。

長男の達夫は出勤しました。

佐渡造船の社長なのです。

丸樹は会長として、仕事のことは達夫に任せています。

次男の貞夫は副社長です。

本宅にはメイドが三人と執事が一人います。

造船所では大型タンカーなどが建造されているのです。

また、丸樹には御殿場のお遊び倶楽部の経営もあります。

公私ともに忙しい日々を送っているのです。

朝食が終わると、いつものように書斎に行く丸樹。

そこには千鶴子が待っています。

千鶴子もまた、毎日のようにここに来て、父の相手をしているのです。

「おはようございます、お父様。」

「千鶴子か、これから別荘の方へ行くとしよう。」

「うれしい!」

 久しぶりの別荘でした。

執事もメイドたちも玄関に並んで迎えてくれます。

丸樹と千鶴子は、さっそくキャンバスを片手に庭へ出るのです。

まずは丸樹が千鶴子を描きます。

千鶴子の、こぼれんばかりの若さの、ほとばしりを入念に写し取るのです。

一面の緑の中に、日差しを受けて輝く千鶴子。

その仕上げをしているところを、今度は千鶴子が描くのです。

それが終われば、ワインを飲みながら炉に薪をくべ、肉を焼きます。

香ばしい匂いが庭を包むのです。

そして、湖畔の風を楽しみながら乗り込んだボートを湖に浮かべます。

やがて黄昏が迫るころ、晩餐には懐石料理を頂いたのです。

食後は、メイドの運んでくれたコーヒーを啜りながら一息入れます。

その後、そのまま千鶴子には、彫刻のようにポーズをとってもらいました。

若々しい身体は美しい。

それは何物にも代えがたいと思われるのでした。

そして夜のとばりが戸惑っているころ、別荘の明かりが灯り始めます。

「満足したかい。」

「ええ、ありがとう。」

うなじを撫でる風は、もうほとんど寒くないほど暖かでした。


 その翌日・・・・・。

今日も楽しく過ごしていたのですが、また夕食の時間を迎えていました。

トレーニングルームでひと汗流した後、シャワーを浴びていた千鶴子ですが、ベッドで身体を伸ばしていて、すこし落ち着いてきたようなので、あらためてダイニングへと向かいます。

そこには既に食事が用意されていて、父と二人揃って食べ始めます。

いつも通り他愛のない会話をしながら。

「ところで、お遊びクラブの方はどうなのかしら?」

「ああ、盛況だよ。今度、お前を招待するよ。」

「やめておくわ。」

「どうして。一緒に行ってみようよ。」


 そうして、乗り気でない千鶴子を連れてクラブへ行ってみます。

中は満員でした。

「へえ、皆さんお好きなのね。」

「お互い様だけどね。」

「そうね。」

スロープの低いところにあるステージを、半円形に取り囲んで座席があるのです。

二人が席に着くと同時に、いきなり千鶴子が指名されました。

嫌がる千鶴子をなだめて、無理やりステージへ上がらせます。

最初は嫌がっていた千鶴子でしたが、司会の指示に従い始めます。

ヌードモデルをやってほしいと言われているようです。

もう、千鶴子も開き直っていました。

観客に向かってポーズをとってみせるのです。

ギリシャ彫刻のように美しい。

しばらく続けて、観客の歓声を浴びます。

ひとしきりポーズをとった後、なおも歓声を上げる観客に手を振ってこたえる千鶴子。

一躍、スターになってしまったようです。

その後、司会者によって紹介されます。

「ご存知のように当クラブのオーナーはサド侯爵の血を引いておられます。そのお嬢様が、この千鶴子さまです。

どうぞ、あたたかい拍手をお願いします。」

観客からは称賛の声と歓声が一斉に上がります。

大歓声です。

千鶴子は一躍スターになりました。

お遊びの女王となったのです。

千鶴子はシャワーを浴びます。

そして身支度を済ませて、我々は家路についたのです。

千鶴子は満足しているようで「また行きましょう。」と言っています。

丸樹は千鶴子を優しくいたわり、疲れをいやしてやります。

千鶴子にとっても楽しかったのでしょう、後はゆっくりと休んだのでした。

 夜が明けると、また、いつも通りの彼女に戻っていました。

昨日の出来事はすべて忘れてしまっているかのように。

しかし、千鶴子がサドの血を受け入れ始めたことに、私はまだ気づいていませんでした。

 それからしばらくして、私のところに一通の手紙が届いたのです。

差出人は「千鶴子さまのファンより」となっていました。

中身を読んでみると。

「この間はありがとうございました。

とても楽しかったです。

ぜひ、また千鶴子さまをお連れいただけないでしょうか?

都合の良い日にちを教えてください。

楽しみにしています。

よろしくお願いします。」

という内容でした。

早速、返事を書くことにします。

次の日曜日はどうかと書いて送ったところ、すぐに結構ですという返信が来たのです。

さて、どんなことになることやら・・・。

 そして、約束の日が訪れたので昼食を食べた後、出かけることにしました。

今回は前回よりもさらにハードな内容になるかもしれない。

そんな予感がしていました。


 クラブに入るといつも通り満員です。

やはり、お好きな方が多いようです。

さっそく千鶴子が指名されます。

みんなヤンヤの声を上げているのです。

ステージに立った千鶴子。おもむろにマイクを取り言いました。

「ご来場の皆様、ありがとうございます。

今日は趣向を変えて、殿方にご登場いただきたいと思います。

われと思わん方は、どうぞステージまでお越しくださいませ。」

これには男たちも喜びました。

何名も名乗りを上げましたが、そのうちの一人が選ばれます。

まずは椅子に座らされ、手足を固定されるのです。

その膝の上に千鶴子も座ります。

そしてゆっくりと身体を、くねらすのです。

観客も、息をのみながら見入ります。

男は、抱きつきたいのに、抱けない。

このままでは弄ばれるばかりではないか・・・・・。

そのとき、もう一人の女が登場して男を自由にしてやるのです。

男は千鶴子に抱きつきます。

さらに強く抱きしめキスをします。

千鶴子は男のやりたいようにさせているのです。

そして男も、それ以上は何もしません。

お遊びクラブのモットーを心得ているのです。

最後に、学生時代に帰ってスカート捲りをして満足します。

会場からは拍手喝采です。

次はいよいよ真打ちの登場になります。

みんな、これを待っていたのです。

千鶴子と麻理子ほか七人の女たちがステージに上がります。

そして音楽に合わせて身体をくねらせながら、

一枚、一枚と着ているものを脱いでゆくのです。

そうなのです。

ストリップショーなのです。

会場は盛り上がります。

そうして今日も楽しいお遊びを堪能したのでした。


 それから一週間後。

今日は佐渡の館に、久美と加奈と麻理子が遊びに来ていました。

みんなダイニングで朝食を食べたあと、千鶴子に連れられ、プレイルームへと行くのです。

メイドが運んでくれた紅茶を飲みながら一服していると、千鶴子が言います。

「みんな裸になりなさい。

サウナに入りましょう。

さあ、いらっしゃい。」

バスタオルを巻いて、頭にもタオルを巻きます。

中は程良い暑さです。

さっそく焼け石に水をかけます。

ジュワッ!と蒸気が立ち上がります。

そうして身体が充分に熱くなったところで、湖で泳ぐのです。

これが何とも爽快なのです。

気持ちよくなったところで湖から上がり、身体を拭いてバスローブに身を包み、ボートに乗り込みます。

そして沖へと漕ぎ出すのです。

湖の上を吹き抜ける風が心地よく、三人は暫しを楽しみます。

それを湖畔で見ていた三人の男たちがいたのです。

男たちは裸になり、ボートのほうに泳いでいきます。

やがてボートにたどり着いた男たちは言うのです。

「我々は神戸芸術大学の学生です。

ボートに乗せて頂けませんか?

佐渡の館の噂を聞いて訪ねてきたんです。

あなた方は館の方でしょうか?」

「いいわよ。

さあ、お乗んなさい。」

ボートを揺らして、三人の男が乗り込みます。

そしてバスタオルを渡してやるのです。

身体を拭いた男たちは、身体に巻きます。

「そう、大学生なの。

それじゃあ特別に招待してあげるわ。」

「本当ですか。

ありがとうございます。

訪ねてきたかいがありました。」

そうしてボートを湖畔につけ、男たちは服を着て館へ入ります。

ロビーで紅茶をいただいて一息ついてから、さっそくにプレイルームへと導かれるのです。

「これ知っているでしょう、三角木馬。

どう、試してみる?

ここまで来たんだから試してみなきゃあね。

跨いでごらんなさい。」

大学生の一人が跨いでみます。

「うわぁーっ!痛いっ!」

早々に降参するのです。

三人とも聞きしに勝る痛さに、ぐうの音も出ません。

「どう、おもしろいでしょう。

今度はこっちよ!」

先のとがった波板に正座して、膝の上に平らな石を乗せるのです。

「ギャーッ!

痛いーっ!

勘弁して下さい!

参りました。」

三人とも、忽ち降参です。

そうして楽しい?時を過ごした大学生たちは引き上げてゆきました。

 あとに残った三人の女たち。

「どう、貴方たちも試してみたい。

見てたから分かるでしょう

そうとう痛いわよ。」

そう言われて三人は、怖いもの見たさで試してみたかったのでしょう、代わる代わるに跨いでみます。

「ああっ!痛いわ!」

「でも、これ、燃えるね。」

「とても堪えられないわ。」

と言いながらも、まんざらでもない様子。

女の方がふてぶてしいのでしょうか。

三人とも、思いっきり堪える快感を味わったようです。

「次は蝋燭よ。」

千鶴子は蝋燭を取り出しました。

「じゃあ、この赤い蝋燭にしてあげようかしら。

バスローブを脱ぎなさい。」

千鶴子は蝋燭に火をつけます。

そして三人の女体の上に垂らすのです。

「ジュワッ!」

「ギャーッ!」

「熱ぅい!」

「イヤッ!助けてぇっ!」

三人は大騒ぎをします。

でも、そうして楽しんでいるのでしょう。

だいぶ満足をしてきているようなので、しばらく休憩をとることにします。

やがて、心の底からこみ上げてくるような喜びを感じて、もうろうとしていた意識も戻ったころを見計らって、三人とも後ろ手に縛り、足も縛り、正座させます。

「やはり、これも試してみなきゃあね。」

そして、そばに控えていたメイドが二人がかりで、四角くて平らな重しを運んでくると、正座している膝の上に乗せました。

「ギャーーーーッ!」

凄まじい声で痛がります。

「ダメダメダメッ!勘弁して!何でも言うことを聞きますから、お願い!あーーっ!」

とても痛がります。

それもそのはずです。

やはり、三人とも角のとがった波板の上に座らされているのですから。

もう頃合いかなと見計らった千鶴子。

「もう勘弁してあげましょう。

その代わり、私の言うことは何でも聞くのよ。」

「はい、わかりました。

何でも言うとおりにしますから、どうぞ助けてください。」

そうして三人は、それぞれベッドの上で休みます。

窓のカーテンを揺らしながら入ってくる風が心地よく、しばしの憩いを誘います。

やがて千鶴子は、また頃合いを見て、三人を外へバスローブのまま連れ出すのです。

そして湖畔まで連れてゆきます。

「しばらく外で過ごしなさい。

家の中へ入ってきては駄目よ!」

そう言い残して、どこへとなく消えてゆきました。

日光に当たり、体が温まってきた三人。

忘れていた感覚が戻ってきます。

ちょうど用を足したくなってきたので、三人は穴を掘って済ませるのです。

終われば土をかぶせます。

「紙がないわねえ。

どうする?」

「大丈夫よ!

水洗があるじゃない!」

「そうだね!

そうしよっか!」

そう言うと三人は、湖に入り、腰を振ります。

「ウワーッ!

気持ちいいね!」

「天然の、水洗だね!」

三人は、はしゃぎます!

人気のない山の中ですから、人に見られることもないでしょうからいいものの、ひょっとして誰かに見られているかもしれません。

案の定、その一部始終を見ていた者がいたのです。

三人の山男たちです。

そっと近づいてゆきます。

「ねえ、みんな。一緒に泳がない。」

「キャーッ!」

叫ぶと同時に、男たちに水をかけ始める三人。

しかし、そんなことで、ひるむものではありません。

「アハハハハハハッ!」

男たちは笑っています。

そうしていると、千鶴子がボートを漕いでやってきて、「ご苦労さん、もういいわよ。」と言って、男たちをボートで帰らせてしまいます。

「どう、ちょっとしたスリルが楽しかったでしょう。」

そう言って笑うのです。

三人も、まんざらでもない様子。

充分に楽しんだようです。

そうして千鶴子は三人を連れてダイニングに戻り、午後の食事を楽しんだのでした。


 翌日。

千鶴子は自宅のベッドの中でした。

窓辺のレースのカーテンを通して、朝の日差しがサンサンと降り注いでいます。

小鳥の囀り・・・・・。

愛犬の鳴き声・・・・・。

そしてメイドの声・・・・・。

「お嬢様、朝食の支度が整いましたので、いつでもお越しください。」

心地よい目覚めでした。

まずシャワーを浴びます。

身支度を済ませ、仏間へ・・・・・。

ご先祖様の御霊に深々と頭を下げ、お祈りをするのです。

その時でした・・・・・。

急にクラクラッと、めまいがして横になり、眠ってしまったのです。

夢の中に観世音菩薩様が現れて、千鶴子に大慈大悲の徳を与えてくださったのです。

ふと、目が覚める千鶴子。

あれほど騒いでいたサドの血も、程よくなってきていたのです。

菩薩様はおっしゃられたのです。

「全てを受け入れて、何事も程々にせよ。」と。

千鶴子は感謝しました。

(サドの血を嫌がり過ぎていたわ。

サドの血を受け入れて、程よく表現すれば良かったんだわ)と。

千鶴子は仏前で深々と頭を下げました。

その時です・・・・・。

仏間に朝の光が差し込んで明るく輝きました。

そうして朝食を頂くことにしたのです。


 それでもサドの血はなかなか治まりません。

でも千鶴子としては、さほどサドの血が騒いでいるわけではありませんでした。

それぐらいは受け入れて、できるだけ程よくしていたのです。

お遊びクラブでも、今までと変わらず楽しんでいる千鶴子。

それを見て麻理子や加奈たちは言うのです。

「以前とちっとも変わらないわね。

まったく、懲りないんだから。」

 未だ富士は雪をかぶっています。

でも、もう春なのです。

梅の便りも聞かれます。

湘南の海は波がきらめき、カモメも飛んでいて良き日和なのです。

サド侯爵の望み通り、その血は脈々と、ここ日本に息づいて行くのでした。